真実が語れられない果物の農薬事情
本記事を読み進める前に注意して欲しいことがる。読み進めていくと「果物はもう食べたくない!」と思う方が多発することが予想される。
しかし、それは本記事の意図ではない。知識を取り入れていただき、その上で日常で選択を行なってほしいのだ。
「果物は不健康なの?!」と真実は読み進めていただいた上で読者が選択すれば良いだけだが、まずは知識を取り入れ、しっかり思考した上で選択を取るという癖づけをしていかなければ、いつまで経っても情報弱者のままで既得権益に都合よく使われるだけになるのだ。
多くの記事が農薬を使う農家や農協派か、農薬を危険視する派かで分かれた記事で、偏った見解が多い。本記事ではできるだけ中立の立場で話していく。
農薬は不健康だから無農薬食材を食べろ!ではない。
そもそも農薬や化学肥料の発展のおかげで人類は生かされている。先人の科学者には敬意と感謝を持つべきである。これを大前提としてほしい。
農薬が使われている野菜より、無農薬の野菜の方が健康的だし、農薬が使われている果物より、無農薬の果物の方が健康的なのは当たり前だ。
同時に、コンビニ弁当より農薬が使われた野菜の方が健康的だし、スナック菓子より農薬がふんだんに使われたフルーツの方が健康的だ。
しかし、現実問題的にお財布の事情と共に食生活を組み立てていく必要がある。
何が体に悪くて、何が体に良いのかの知識を蓄え、健康的な食事摂取の底上げをすべきだと筆者は考えている。
残留農薬が多い果物や野菜ランキング
アメリカの非営利団体『Environmental Working Group :EWG』が発表する、残留農薬が多い野菜や果物のリストは下記だ。
- いちご
- ほうれん草
- ケール、コラード(ケールの一種)、からし菜
- ネクタリン
- りんご
- ぶどう
- パプリカ・唐辛子類
- さくらんぼ
- 桃
- 梨
- セロリ
- トマト
冒頭からお伝えしているように、農薬が使われている果物・野菜は危険だから食べるのは辞めようという話をしたいわけではない。
いちごは数年農薬多いランキング1位をキープしているが、同時にイチゴは(正確には果物ではないが)好きな果物ランキングも1位をキープしている。
このランキングで注目していただきたいのは、フルーツが上位を多く占めていることだ。
イチゴ、りんご、ぶどう、さくらんぼ、桃、梨といった主要で食べられるフルーツが上位を独占している。
なぜ果物は残留農薬が残りやすいのか?
それは単純に農薬の使用量、使用回数が多いからが大きいだろう。一般的に野菜の
なぜ果物農家は農薬を野菜に比べ多く使用するのかを下記で話そう。
病害虫が野菜よりはるかに多い
小松菜とりんごで病害虫の多さを比較してみる。
・小松菜
参考(長野県:令和4年農作物病害虫・雑草防除基準)⇒ https://www.pref.nagano.lg.jp/bojo/nouyaku/bojokijun/index.html
小松菜における考えられる病害虫は4種である。
小松菜は比較的初心者でも容易に栽培できることで知られているが、その理由はまさに病害虫の少なさにあると考えられる。
・りんご
参考(長野県:令和4年農作物病害虫・雑草防除基準)⇒ https://www.pref.nagano.lg.jp/bojo/nouyaku/bojokijun/index.html
小松菜が4種だったのに対し、時期ごとに農薬を散布することを考慮すると168種もの病害虫からリンゴを守らなければいけない。
長野県が発行する資料によれば、農薬は年間16回散布する必要性があることがわかる。また多くの病害虫に対応すべく長野県では平均37種もの農薬を散布しているのだ。
特にりんごは農薬のおかげで生存していると言っても過言ではない。
農薬を使わなかったら?
果物は野菜に比べ糖度が高く、病害虫に犯されやすい。
病害虫に犯された時のリスクが大きい
果物の特徴として、木からなることが特徴でしょう。
木なので、野菜とは違い数ヶ月〜1年で発芽し育ち枯れるというルーティーンを毎年繰り返すわけではなく、一回発芽してから、何十年と時を経て育ち続けていく。りんごの木であれば平均40〜50年が寿命だ。
そこでだ。平良木 武氏、鈴木 茂氏、及川 英雄氏による「無農薬で栽培したリンゴの病害虫による被害と樹体への影響」論文から参照する。
農薬使用量を上記で書いたように標準的に使用した場合、約半量にした減農薬にした場合、無農薬にした場合でそれぞれ収穫量は及び翌年の影響はどうなるかという実験がある。
結果は下記の通りだ。
農薬量が減るに比例し、品質・収量ともに少なくなっていることがわかる。
また翌年の農薬量を増えるほど開花芽数、着果率は著しく下がることがわかる。そして状況回復をするためには長い年月が必要で3〜4年はかかるのだ。
想像していただきたい。読者は樹齢30年のりんごの木を所有している農家だとする。祖父の代から育てている大切なりんごの木だ。
農薬を減らすことで、収量が減り、明らかに木が弱っていくことがわかっている、収入にももろに直結する。
奇跡のりんごは有名だが、現実的に9年間も実がならず無収益を続ける可能はほぼ不可能に等しい。
読者ならどうするだろうか?
現実問題として果物育てるには農薬が必須という考えを持っているのが無難なのだ。
果物は食べない方が良いのか?
野菜と果物の栄養価を比較すると驚くほどに、果物の栄養価が低いことがわかる。
その上、農薬まみれときたら読者は食べる気をきっと失うでしょう。
では問いたい。そもそも果物を栄養をとるために食べているだろうか?
その答えは「NO」のはずだ。なぜなら。
果物は嗜好品
本来果物は嗜好品(しこうひん)の一つだ。
まだ加工技術が発展しなく、砂糖すら手に入らない時代。甘味や糖分を果物から得ていた。
ここまで記事を読み進めている読者なら、農薬もなく果物を口にできる希少性には容易に気がつくだろう。
嗜好品というのは現代も変わっていない。
果物といえばデザートだ。食後の締めとして頂く、デザートはより満腹感をより幸福感へ変換してくれる。
またいくら農薬まみれだろうと、スナック菓子のようなものに比べれば、明らかに健全的な食べ物であり、健康的なのは間違いない。
しかし、そこまで果物の農薬量に恐怖する必要はない。
流水で洗えば大丈夫
残留農薬除去に関しての論文を読み漁ったが、水洗いで事足りるようだ。
洗浄用剤もあるが、そこまで差が出るようには感じ取れなかった。
筆者としては、洗浄用剤にお金を使うなら、農薬の使用が少ない農産物を購入する方へお金を使った方がよいと感じる。
また、水洗いにはポイントがある。
農薬は基本は水溶性で水に溶けやすいが、多くの論文での実験方法として「流水で30秒以上」「桶に水を張り農作物を漬け10回以上擦る」などの方法がとられていた。
イメージ的には「農薬を水に溶かし除去」ではなく、「農薬を物理的に剥ぎ取る」というイメージを持って頂きたい。
また、ある論文では流水で洗う時、一瞬洗った時から洗浄を続けることで「除去率70%から95%になった」ともある。
結論
農薬で人為的に汚染された葉物野菜 5 種から 10 種の残留農薬を 9 種類の除去方法で除去した場合の効果を比較検討しました。各方法の削減範囲は 43.7 ~ 77.0% で、葉物野菜 5 種類の削減範囲は 40.6 ~ 67.4% でした。レタスの減少率が最も高く (67.4 ± 7.3%)、サムチュウの減少率が最も低かった (40.6 ± 12.9%)。ホウレンソウとクラウンデイジーは、減少率に有意な差は見られませんでした。平均して、流水 (77.0 ± 18.0%) と煮沸 (59.5 ± 31.2%) を使用した除去が最大の減少につながりましたが、洗剤 (43.7 ± 14.5%) を使用した除去は最小の減少につながりました。クロルフェナピル、ジニコナゾール、インドキサカルブ、フルジオキソニル、ピラクロストロビン、5種の葉物野菜中のルフェヌロンは、他の方法よりもブランチングとボイルで低かった。
Effectiveness of Different Washing Strategies on Pesticide Residue Removal: The First Comparative Study on Leafy Vegetables
https://www.mdpi.com/2304-8158/11/18/2916/htm
まとめ
果物は糖分、甘味という成分を天然作物から吸収する唯一の方法と言っていいだろう。そして究極に贅沢な嗜好品のはずだ。
スナック菓子などの加工品でのお菓子、デザートは美味しいし安価だが、果物の贅沢さにはかなわない。
果物を生産するための農薬使用量がいくら増えていても、安全性が担保された基準をクリアしている限り、そこまで大きな問題は生じないはずだ。
「農薬は発がん性のリスクが、、、」と思う方も多いだろうが、本記事の趣旨は果物があくまで嗜好品の一つで、加工された菓子類、デザート類の嗜好品に比べれば圧倒的に安全で健康的だという話だ。
また、農薬とは人類の進歩に大きく貢献しており、人類の進化は農薬のおかげだと豪語する者も少なくない。まだまだ発展するだろう。